平川祐弘先生と、小泉八雲の没後120年、ヘルン文庫の開設100年

 『月刊HANADA』という雑誌を購読される方なら、その巻末の随想の筆者平川祐弘(ひらかわ すけひろ1931-)先生をご存知でしょう。この随想が、ずいぶんと長く続いていることも、ご存じでしょう。

  先生は、多言語を操る比較文学の泰斗として長年に渡り活躍なさっている方で(富山県出身の英文学者佐伯彰一先生と東大の研究室で机を並べていたとのことです)、その博覧強記の一端にラフカディオ・ハーン(帰化して小泉八雲)というイギリス人についての研究があります。

 当然ながら先生の著作はバラエティに富んでいて、その中の単行本が数冊、私の本棚に有ります。例えば、その中の1冊に、ダンテの『神曲』に関するものもありますが、これは、読みたい読了したいと思いながらも、「まだ読む機が熟していない」と自分勝手に決め込んで、書棚に飾ったままになっています(先生には誠に申し訳ない)

 で、先生は、勉誠出版から【平川祐弘決定版著作集】をお出しで、いずれも分厚い書物です。富山県立図書館にもありますが、その最近の巻、2022年発行の書名は『 Ghostly Japan as Seen by Lafcadio Hearn 』と言います。書名からわかるのですが、全文英文による660ページの1冊です。

 …だからと言って、私は、その英文論文についてお話ししようというのでありません。所蔵してはいるのですが、手に余ります。今は、この巻末の12ページの日本文【『平川祐弘著作集』外文篇 後記】のことをご紹介しようという次第です。

 そこの次のような一文に、富山に関する嬉しい記述が出てくるのです。

 将来、私の英書をもとにクラスを開く人も必ずや出るだろう。松江をはじめ各地の八雲会には講演等に招かれてお世話になったが、英語力の水準が抜群に高かったのは、松井玖美さんがおられた富山の八雲会で、大学のハーン研究の先生に遜色なかった。その熱心なグループが何年もかけて私の英文著書 Japan’s Love-Hate Relationship with the West を読破したと聞いた時、わたしの外国語著書の読者の中には日本人もあり得るのだ、その人たちにとってはその読書は、英文を通しての日本再発見として二重に興味深いのだ、ということも了解した。
 なお、次にふれる北星堂も、富山が生んだすぐれた英文学者南日恒太郎の助言があって日本における英書出版の先駆となった。次にその北星堂によるハーン関係英文図書一般の出版に触れたい。〈以下略〉

 ちなみに、富山大学付属図書館には、小泉八雲の生前の蔵書を納めた、日本そして世界に唯一の蔵書群「ヘルン文庫」があります。ヘルンは、ハーンのことです。その傍らには、南日恒太郎にちなんだ「南日文庫、北星堂書店創業家にちなんだ「中土文庫があります。

 そして今年、令和6年、西暦2024年は、小泉八雲(1850-1904)没後120年、ヘルン文庫(1924-) 開設100年と節目の年です。

 そこで、富山県人にとっておきの豆知識をご披露いたします。ヘルン文庫や北星堂書店を取り巻く富山県出身の錚々たる英語人脈を、生年の順に列挙すると、次のようになります。

小泉八雲  1850-1904
南日恒太郎 1871-1928
田部隆次  1875-1957
田部重治  1884-1972
馬場はる  1886-1971
中土義敬  1889-1945
尾島庄太郎 1899-1980
西崎一郎  1903-1983
中土順平  1915-2005
佐伯彰一  1922-2016

 富山のマスコミがこれに気づいて特集記事を組んでくれると、嬉しいのだけれど…
千田注:祐の字は正しくは、示に右)

(引用参考文献)
『Ghostly Japan as Seen by Lafcadio Hearn』平川祐弘著 勉誠出版 2022年11月刊
『群峰 第8号』富山文学の会 2023年4月刊