教育劣位社会だそうです。


 書店でその書名を見たとき、チョットびっくりしたのですが、手に取ってみました。『教育劣位社会』(岩波書店刊)って、何だろう? 私には馴染みのない言葉でした。

 どうやら教育に関する研究者の研究報告らしいと分かって、書棚に戻そうとしながらパラパラとページを繰ったら、“富山”とか“富山調査”という言葉が目につきました。立ち読みをして確認しようと思いましたが、一筋縄ではいかないとわかり、とりあえず購入してしまいました。

 門外漢なのでしばらく“ツン読”でしたが、最近になって読んでみると、

〈本書では、国民の世論の総体を、〈教育劣位社会〉として特徴づけている。とりわけ、高等教育の劣位(優先順位の低さ)が際立っている。日本人が教育を軽視しているわけではない。教育は大事だと思っているが、限られた財源を教育、とくに高等教育に配分すべきだとする政治勢力は弱く、資金配分の優先順位が低いのである。〉

 なるほど、そうしたことらしい。書籍のカバーの袖には、

〈教育が、国や個人の未来を託す重要な社会インフラであることは誰も否定できないだろう。海外には中等教育、さらには大学教育が無償である国も少なくない。にもかかわらず、日本では相変わらず「受益者負担」の考え方が根強い。それはなぜか? 画期的な社会調査をもとに、日本人の「教育負担についての考え方」を探り、今後の社会的な議論につなげる。〉

とあり、書籍は、いささか力んでおいでだが、その画期的な社会調査は3回にわたって実施された。

 1回目の調査は、2010年2月に富山で。2回目の調査は、2011年1~2月に東京都で。そして3回目の調査は調査会社に登録されたWEB調査モニターに対して協力を依頼し、2011年11~12月に実施された。

 こんな大問題で、富山が、日本を代表して東京と比較されたの? こりゃまたどうしたことだと、興味がわきました。

 研究者は、富山調査の前の日本の政治状況を、

〈2009年8月の衆議院選挙では、長期与党であった自由民主党が下野し、民主党政権が誕生した。当時、民主党が掲げていたスローガンは「コンクリートから人へ」。無駄な公共事業を減らし、社会保障や子育て、教育の充実を訴えた。〉

と概括し、富山の調査を次のようにおっしゃる。

 〈富山調査では、その公共事業と教育領域との比較を試みた。〉〈このころ富山県で取り組まれていた、あるいは取り組もうとされていた公共事業の中から〉として取り上げたのは、

 「北陸新幹線の整備」「高速道路の整備」「富山市内電車の環状線化」「公園の整備(海王丸パークなど)」「2000年国体のための運動施設の整備」の5つで、〈5つを取り上げ、公共事業に税金を使うべきか、むしろ教育に税金を使うべきか〉を尋ねたのだそうだ。

 そして、

〈少なくとも地方の人びとにとって、公共事業は決して過去のものではなく、教育に税金を費やすくらいなら公共事業に、という意見をもつ者は、現在もそれなりにいるということだ。〉

という調査結果が出たのだそうだ。

 でも、この結論は、東京の調査結果との比較が述べられていないようなので、どうなんでしょう。

 結局、どうしても私にわからないのは、“地方”を代表して富山だけが調査対象となり、教育劣位社会の検証材料とされたことでした。研究者にとって、富山以外であっても結論は同じだという目算がたっていたのでしようか?

(引用参考文献) 
『教育劣位社会-教育費をめぐる世論の社会学』矢野眞和、濱中淳子、小川和孝著 岩波書店2016年12月刊

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